女王蜂の歌詞が好き

女王蜂ってまず存在感が凄いし、楽曲とか声とか演奏とかビジュアルとか色んな魅力が盛りだくさんなバンドなんですけど、歌詞も大好きなんですよ。

私が特に好きなのは『緊急事態』っていう曲の歌詞なんですけど、

 ああ ただ増えてゆくようで減ってゆく日々を
 使い果たさず出会えたこと自体 緊急事態

っていうサビのフレーズを初めて聴いたとき、なんかすごく「じーん」としちゃったんです。

この歌詞って、要は身も蓋もない言い方にしてしまうと「死んでしまう前に出会えた」っていうことですよね。
だけど、その「死んでしまう前に」っていうのを、アヴちゃんは「ただ増えてゆくようで減ってゆく日々を使い果たさず」って表現したんですよね。

日々過ごしていると、何かを努力したり積み重ねたりすることもあるじゃないですか。そうすると人生でなにかが「増えてゆく」っていう感覚になることもあるんじゃないかと思うんです。(私は実際にはあんまりないけど・笑)だけど、人生の残りの日々っていうのは確実に「減ってゆく」わけですよね。そしていつかは「使い果たす」わけです。

だからアヴちゃんはこのワンフレーズで、何かが「増えてゆく」ような感覚、達成感とか喜びとか希望とかと、人生の残りの日々は「減ってゆく」っていう抗うことのできない現実と悲しみと切なさを、両方歌っているんです。そしてその上で、「使い果たさず出会えた」っていうことを自分の中で宝石のように輝かせて歌っているんですよ。

こりゃすごいな、って思いました。まず自分の五感でしっかり何かを感じて、そしてそれを自分の言葉で丁寧に且つ簡潔に表現する、っていうのを完璧に出来ている人ってなかなかいないと思います。アヴちゃんは、自分が個人として感じたことを、アヴちゃんという個人でなければ出てこない形で表現しているから、どこをどう切り取ってもオリジナルなんですよね。だからワンフレーズ聴いただけでも存在感が圧倒的で、「じーん」としてしまう、胸にくるんだなと思いました。


最近だと、最新曲『催眠術』の「飲み干すアルコール/どこまで歩こう」っていう歌詞にも、すごくグッときちゃいました。一見なんてことのない歌詞だし、韻の踏み方だってよくある感じなんですけど、アルコールを「飲み干す」ときのあの勢いと、アルコールを体に注入した後の、どこまでも歩いていけそうなあの感覚で歩くときの勢いが、見事にリンクしているなあって思ったんです。あと、どんな気分でアルコールを飲み干したのかも、いろんな想像ができるじゃないですか。楽しいのかもしれないし、すごく嫌なことや悲しいことがあったのかもしれないし。なんかモヤモヤしているのかもしれないし。聴いた人がいろんな感情をワンフレーズに詰め込めるし、そしてどんな感情だったとしてもそれを吹き飛ばして一緒にどこまでも歩いてくれるような勢いと強度もあって。なんかもうすごく素敵だなって思いました。


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