UNDER THE COUNTER ONEMAN LIVE 「 Hello, Today 」

2023年10月7日、渋谷LUSHで開催された UNDER THE COUNTER の ワンマンライブ 「Hello, Today」 に行ってきた。

2013年に解散した UNDER THE COUNTER の、10年ぶりの一夜限りのライブ。(オリジナルメンバーでのライブは13年ぶり)。発表されたときは、なんだか信じられない気持ちだったが、すぐに、これはなんとしても行かなければいけないやつだ、と思った。

当日、ライブハウスに入ると既に人がいっぱいだった。わりと後ろの方だったので、ステージはあまり見えなかった。

でも、ライブがはじまると、そんなことはどうでもよくなるくらい最高の気分になった。10年ぶりとは思えない強靭な演奏、クリーンなギターと疾走するリズム隊の見事なアンサンブル、関谷謙太郎のあの声、あの眼。あの日のままの UNDER THE COUNTER がそこにいた。

『pepe』で幕を開けたそのライブは、これまで UNDER THE COUNTER が私に与えてくれたものを再確認していくような、そんなライブだった。
特に、3曲目の『モダンライフ』で思わず涙が溢れたときには、このバンドが自分にとってどれだけかけがえのないバンドだったかということを、完全に思い出した。

< 訳もなく街へ出た 欲しいものもないのに
 あてもなく歩くだろう 満たされやしないのに >

< 何となく頷いた 傷つくことないように
  それとなく笑うだろう 笑いたくもないのに >(『モダンライフ』)

この曲に今でも涙が溢れてしまうのは、UNDER THE COUNTER が、生活の中にへばりついたやるせなさとそれに振り回される一人の人間のリアルを、ずっと歌ってきたからなのだろう。不思議なことに、2005年のリリースから18年経った今でも、この曲の中に出てくるやるせなさは、今の私のやるせなさと同じだった。まあ、名曲というのは、そういうものなんだろう。

『sohappy, unhappy』を聴いているときにも、「ああ、これだから UNDER THE COUNTER が大好きだったんだよなあ」とつくづく思わされた。

< ソウハピーです 誰にだって僕はなれるから
  アンハピーです 同じように誰にだってなれやしない >

< ソウハピーです 何処へだって僕は行けるから
  アンハピーです 同じよう何処へだって行けやしない >
(『sohappy, unhappy』)

私たちの生活や感情は一筋縄ではいかない。いつだって「sohappy」と「unhappy」の間で、その両極に数秒ごとに揺れてしまう。その、ただ毎日を生きていくことの難しさ。誰にでもなれるようで誰にもなれない、何処にでも行けそうで何処にも行けない、成功者の結果論を読んだところでどうにもならない、人生の困難さ。そう、それこそが、音楽にするしかない、ロックバンドが鳴らすしかないものなのだ。

ベースの大隅さんがどうしてもセットリストに入れたかったという『ノー・セラピー』も、そんなロックバンド・UNDER THE COUNTER のかっこよさが詰まっている曲だと、改めて感じた。

< I can’t get no therapy
I can’t get no therapy
明日はただの今日のつづきさ
 出口はあるの? このスパイラル >(『ノー・セラピー』)

つらいことはあって、だけど治療法はなく続いていく生活と人生のしんどさ。UNDER THE COUNTER は、その中でただただ心が揺れる様を、右往左往する様を歌う。

< 退屈凌ぎにガムを噛む
  味なくなったらすぐに吐く 
  それ踏んじまって 
  へばりついちゃって
  あたまにきてまたガムを噛む >

< やることないので煙草吸う
  短くなったらすぐに消す
  空気汚れて 
  外へ出たけど 
  所在がないので煙草吸う >(『ノー・セラピー』)

そこには分かりやすい救いだとか簡単に手に入る希望だとか確実な治療法だとか、そんなものはない。ただ、なんとも言えないスパイラルの中でうろうろする、やたらリアルな人間の姿があるだけだ。
だけど、それこそが私にとっては、とても誠実でかっこいいことに見えた。こんなロックバンドが今ここにいてくれるのって最高だって、やっぱりこの日も思ったのだった。

また、UNDER THE COUNTER は、疾走感のある曲もいいけど、『賛美歌』や『Teenage Wasteland』のような聴かせる曲も最高だ。
『賛美歌』の <手を合わせ祈っても神様は僕の中/ひざついて誓っても神様はキミの中 > というフレーズは、あの頃よりも今の時代に聴いてこそ深く沁みるし、「青春とは何だったのか」と言う関谷さんのMCからの『 Teenage Wasteland 』には、40歳の UNDER THE COUNTER の青春を感じて胸が熱くなった。

アンコールの最後の曲は、『Hello, Today』だった。
この日のライブのタイトルであり、私が UNDER THE COUNTER に出会った最初の曲であり、今でもやっぱり一番好きな曲である『Hello, Today』。
救いも希望も治療法もない、一筋縄ではいかない、昨日の同じような今日が続く生活の中で、それでも薄暗い部屋で、煙草の煙の中、フラフラ立ち上がり、今日に力なく「ハロー」と告げる。それは、完全に、私のすべてに寄り添ってくれるロックだった。NIRVANA は < Hello, hello, hello, how low > と歌ったが、UNDER THE COUNTER は < Hello, Today > 歌ったのだ。
この日の『Hello, Today』も、それはそれは凄まじく、無気力と気怠さを蹴飛ばし、心に火をつける、そんな不思議な力に満ちていた。
この曲の1分30秒を超える最高のアウトロが鳴っている間、ああライブが終わってほしくない、UNDER THE COUNTER が終わってほしくない、ずっと続いてほしい、と願っていた。

アンコールが終わって、客電が点いても鳴りやまない拍手。
関谷さんが出てきて、「もうやれる曲がほんとにないの」と言うが、その後メンバー全員出てきてくれて、「今日やった曲の中からでよければもう1曲やる」と言ってくれて、『モダンライフ』が再び演奏された。客席のものすごい盛り上がり。私も拳上げまくり、ジャンプしまくった。

< いつからか僕たちは不確かに生きのびて
  どこからか呼ぶ声がしたようで立ち止まる
  耳をすましてみれば > (『モダンライフ』)

この『モダンライフ』の最後のフレーズが、今回メンバーにライブをやろうと声をかけた大隅さん、ずっと UNDER THE COUNTER を聴いて心のどこかで待っていたファン、生きのびてこの日ここに足を運んだ人、そして見事に復活した UNDER THE COUNTER、そのすべてのことを予言していたかのように聴こえた。

それから、この日、印象的だったのは、激しい演奏とはうってかわって、和やかで楽しそうな曲間のMCの雰囲気だった。関谷さんが何度も「こんなに集まってくれてありがとう。ずっと好きでいてくれてありがとう」と言ってくれたのも、すごくうれしかった。

ライブが終わってからも、ずっと UNDER THE COUNTER を聴いている。
こんなに名曲だらけの、かっこいいロックバンドが、一夜だけしかライブをやらないなんて、もったいないなあと思う。これからも、もっと見たいのになあ、と思ってしまう。
でも、< 僕らは曖昧で思いがけない日々を生きてる >(『GREAT GREEN』)から、いつかまた会える日が来るんじゃないかと思っている。

とりあえず今は、こんなに素敵な夜をくれてありがとうと、UNDER THE COUNTER に伝えたい。
ずっと大好きだ。