syrup16g tour「Les Misé blue」

2022年12月8日(木)Zepp Yokohama

1. I Will Come(before new dawn)
2. 明かりを灯せ
3. Everything With You
4. 診断書
5. モンタージュ
6. Don’t Think Twice(It’s not over)
7. 深緑のMorning glow
8. Alone In Lonely
9. In The Air, In The Error
10. In My Hurts Again
11. うつして
12. Maybe Understood

En1
13. Dinosaur
14. Stop brain
15. Drawn the light
16. 明日を落としても

En2
17. 前頭葉
18. 神のカルマ
19. 天才
20. リアル

En3
21. Les Misé blue


コロナ以降、初めてライブに行った。Zepp Yokohama に行くのも初めてだし、スマチケで入るのも初めて。どんな感じなんだろうな、と若干の不安と緊張もあったが、スタッフさんがゆっくり安全に誘導してくれて無事入場。

目の前にあらわれた五十嵐隆。夢みたいだ。でも現実だ。ちゃんと私の目の前に、確かにいる。何も言わずに演奏が始まる。syrup16g だ。中畑さんのドラム、キタダさんのベース、五十嵐の声。アルバム『Les Misé blue』の1曲目『 I Will Come(before new dawn)』がスタジアムロックみたいな迫力で会場に響き渡る。中畑さんとキタダさん、前から凄いんだけど、数年見ない間にもっと凄くなっていて、ただただ驚くしかなかった。なんなんだ、この人たち。中畑さん、何気なく叩いているように見えるんだけど、すごい音を繰り出してくる。わりと早い段階で五十嵐の左足が上がり、なんかたまらない気持ちになった。

アルバム『Les Misé blue』すでに聴きまくっているけど、ライブで聴いてもすごくいい。ギターの音が煌びやかで力強くてそれだけでもグッと来てしまうし、3人の音が合わさり絡まるとバンドとしての艶がすごくて、心が洗われていくようだった。余計なものが流されていって、ただシロップを好きな気持ちだけでステージを見ていた。

『うつして』では、ピンスポットが客席の方をぐるぐる映す演出もよかった。そして、何より、この曲の本質がライブで爆発した感じがした。シロップのライブを見ているときに、たまに不意に訪れる、お互いの奥の方にあるものを引き摺り出してきてそっと交換するような、あの感覚が来た。その時間と空間の特別さに、胸が押しつぶされそうになる。
「あなたのその痛みをうつして」
そう歌う五十嵐の裸の声は、この数年間物理的にはできなくなった濃厚接触を、心と心で、感覚と感覚で、触り合うことはできているみたいな気持ちにさせてくれた。シロップと私たちの濃厚接触だった。シロップを好きな気持ちが溢れて止まらなくなった。

本編最後の『Maybe Understood』は、アルバムの中で一番好きな曲でもあるんだけど、ライブでのこの曲は、本当に本当に素晴らしかった。美しかった。三人のしなやかなバンドサウンドに、五十嵐が持つ人間の業みたいなものが吸い込まれていく感じ。この2022年に、シロップの最新の名曲をライブで聴けるという幸せに浸ることができた。ずっとこの時間が続けばいいのにと思った。

『Dinosaur』で軽やかに始まったアンコールでは、続く『Stop brain』『Drawn the light』で次第に熱気を帯びていき、そこからまさかの『明日を落としても』。自分でも気づかないうちに後から後からすごい量の涙が出てきて大変だった。やっぱりこの曲はとんでもない曲だ。とんでもなく本当のこと、抜き差しならないことを歌っている。そして今回のアルバム『Les Misé blue』でも、ここには詳しくは書かないけど、それはそれは抜き差しならないことがあちこちで歌われている。それが五十嵐隆だし、syrup16g だ。それをずっと聴いている私の根本もこれなんだなと思った。

ダブルアンコールでは『前頭葉』『神のカルマ』『天才』とさらに盛り上がっていき、『リアル』で最高潮に達したように感じた。ていうか、この日の『リアル』はまじでヤバすぎた。50歳目前の人たちがやっているライブが、ここまで尖っていることが、ここまで危機迫っていることが、あるのだろうか。尖り散らかした『リアル』が本当にかっこよかったし、指を立てた五十嵐も震え上がるほどかっこよかった。

どこのタイミングだったかは忘れたんだけど、
中畑さん「みんな明日も来るの?」→ お客さんが手を上げる → キタダさん「五十嵐くんも明日来るの?」っていう流れがあって、五十嵐が、「明日も来るけど、明日もやるけど、今日しか来れない人もいるだろうから、明日はないっていうつもりで、今日死ぬつもりでやります」っていうようなことを言って、そしたら五十嵐は本当にすごい量の汗を流しながら、左足上げながらギター弾いて、歌って、シャウトして、ほんとに全てを使い果たすかのように全部を出し切って、最後トリプルアンコールの『Les Misé blue』が終わったときには倒れ込んでいた。それを見て、私はこの人のことを表現者としても人としても尊敬するって心から思った。五十嵐はいつも音楽に対して誠実だし一生懸命だ。私はそれを本当に凄いことだと思う。私はたぶん一生この人のことを好きだと思った。

ものすごいライブを見せられて興奮状態で会場の外に出て駅まで歩く。横浜はクリスマスのイルミネーションでキラキラしていて、スカイウォークから見える夜景のビルの間にはびっくりするほどでかい満月が出ていて、syrup16g のライブは最高を更新して、なんか出来すぎた夜だなと思った。



2022年12月9日(金)Zepp Yokohama

1. I Will Come(before new dawn)
2. 明かりを灯せ
3. Everything With You
4. 診断書
5. モンタージュ
6. Don’t Think Twice(It’s not over)
7. 深緑のMorning glow
8. Alone In Lonely
9. In The Air, In The Error
10. In My Hurts Again
11. うつして
12. Maybe Understood

En1
13. Dinosaur
14. Stop brain
15. Drawn the light
16. 明日を落としても

En2
17. 前頭葉
18. 神のカルマ
19. 天才
20. 落堕
21. 真空

En3
21. Les Misé blue


昨日よりは冷静にライブを見る。おかげで『Dinosaur』のキタダさんのかっこよさや、『In The Air, In The Error』の中畑さんの半端なさに気づくことができた。というかアルバム『Les Misé blue』の曲全部に言えることだが、二人が後ろから支え包み込んでいる安心感が暖かさを生んでいるなと思った。そしてこの日もやはり『Maybe Understood』がすべてにおいてヤバすぎた。

『Drawn the light』の後、五十嵐が「何年前の曲やってんだって感じですけど、言いたいこと変わってないんで。それはそれでどうなんだって、褒められたもんじゃないですけど、みなさんがきてくれてるからいいよね」的なことを言ってからの『明日を落としても』で、ほんとにこの人変わってないんだなって、悪い意味じゃなくて信用できるというか愛しいというか、そういう気持ちになったし、『Drawn the light』や『明日を落としても』を聴いていた頃から変われない自分のことも少し許せそうになった。

あと、五十嵐が「やっと(新譜の)曲が身体に馴染んできた、もう今日終わっちゃうけど」と言っていたけど、確かに昨日よりもさらに身体性を増していて、バンドも曲も生き物のように命が宿っているのを感じた。ああ、明日も明後日もずっとシロップに会えたらいいのになと思ってしまった。

昨日『リアル』だったところが『落堕』と『真空』だったわけだが、やっぱり声は出せなくても『落堕』だとわかった瞬間の高揚はすごかった。ロックバンド syrup16g のかっこよさ。三人が三人とも、三者三様キレキレや。誇張じゃなく syrup16g は世界一のロックバンドだと思う。

ラストの『 Les Misé blue』は、まず中畑さんがステージに戻ってきて「大好きな曲やります」と言ってスネアを叩き始め、次に五十嵐が入ってきてギター弾き始め、最後にキタダさんが入ってきたんだけど、一瞬たりとも五十嵐が一人になる瞬間がなくて、歌詞にも「ひとりの世界は/ひとりじゃないから」ってあるけど、なんだか二人が五十嵐のことをひとりにしないとようにしてるみたいに見えた。これはちょっと拡大解釈かもしれないけど。
あと、この曲は音源とは違ってドラムで始まりドラムで終わったことも印象的だった。最後のドラムだけの音がずっと胸に残っていた。
中畑さんがちょっとうるっとしているのを見て、こっちもうるうるきてしまった。
そういえばこの日(12月9日)は、15年前2007年にNHKホールでシロップのライブがあった日(Tour「END ROLL」)で、このときに五十嵐が「最後に僕の大好きな日本武道館でライブをやってシロップは一旦終了します」と言ったのだった。(翌日、公式サイトに「解散」と発表される。「一旦終了」って言ったじゃん!解散てなんだよ!嘘つき!とぶち切れ、泣き崩れた記憶。)だから、中畑さんはいろいろ思うところがあったのかもしれない。想像だけど。再始動にあたり、中畑さんが一番葛藤したんじゃないかなって個人的に思ってるから。これも想像だけど。

最後ステージ捌ける間際に、五十嵐が「来年はライブなんとか(多分ライブヘルシーのこと)とかやるから、みんな絶対来てね!絶対だよ!おじいちゃんになっちゃうから!」って言ってて、いや、ライブあるのは嬉しいんですけどね、「おじいちゃんになっちゃうから」ってあなた、あなたが年とるってことはこっちも年とってるんですよ!今も腰痛いんですよ!たぶん明日から筋肉痛ひどいんですよ!こちとらアラフォーなのにスタンディングでがんばってるんですよ!!!って思ったけど、でもどう考えても五十嵐の方ががんばってるんだもんな。絶対、絶対、来年もライブ行きますよ。約束があるっていいね。こんな私でもちょっとはがんばれそうだよ。

まあ、そんなわけで、とにかく2日とも素晴らしく、特別なライブだった。syrup16g は本当に私にとって特別なバンドで、私の人生のすべてだと思った。家に帰って、寝て起きて次の日になっても、まだ幸せというか暖かい気持ちというか余韻が続いていた。時間を無駄にしないように、できるだけちゃんと生きたい、と柄でもないことを思った。明らかに、私は syrup16g に会いに行って元気になった。このツアーに関わる人すべてに感謝したい。本当にありがとうございました。

ただひとつ今困っていることは、他のバンドの曲を聴く気が一切しないし、他のバンドのライブに行く気も起きなくなってしまったことだ。今のこの気持ちと記憶を上書きしたくなくて、ずっとふわふわと16gのシロップの中を漂ってる。まじでヤバいバンドを好きになってしまったものだ。



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