syrup16gなりのDISCOと激励

2015年11月3日、「the telephones Presents "Last Party〜We are DISCO!!!〜”」@さいたまスーパーアリーナに行ってきました。the telephonesが無期限活動休止に入る前の、ラストイベントです。

主催のthe telephonesは、かねてから「この日は同じ時代を走って来た仲間と埼玉の先輩をまねく」と宣言していたんですが、この「埼玉の先輩」として出演したのが、dustboxsyrup16gだったんですね。

で、イベント全部について書いてるとおそろしく長くなっちゃいそうなので、生粋のぷっしろファンの私はsyrup16gのライブについてだけ書いておこうと思います。

セットリストはこんな感じでした。


  1 生きているよりマシさ
  2 sonic disorder
  3 生活
  4 神のカルマ
  5 リアル
  6 Reborn


1曲目はステージ前面に紗幕が掛かったまま演奏し続け、曲が終わるころ紗幕にシルエットが映り、2曲目「sonic disorder」の始まりで紗幕が落ちるっていう演出。

   「あれ、これどこかで見たことある気がする・・・デジャヴ?」

って、そう、これ、五十嵐隆「生還」の始まりと同じ演出だったんです。
「生還」でシルエットが映ってからの紗幕が落ちた瞬間は、特別なシーンですよね。ステージに五十嵐隆だけじゃなくて、中畑大樹キタダマキがいるってことをファンが認識した瞬間ですからね。そんで、今から考えるとsyrup16g再始動へのはじまりとも言える、象徴的なシーンでした。

誰もが願っていたけれど誰もが半ば諦めていたsyrup16gの復活。その始まりである「生還」のオープニングを再現するということ。それは、テレフォンズとテレフォンズのファンに「バンドは必ず復活できるよ」っていうメッセージを送っているみたいに見えました。

セットリストも、ぜんぶ(シロップの中では)有名な曲ですよね。これも、多少テレフォンズのファンのことを考えて、知っている可能性が高い曲を選んだ結果なのかな〜と思いました。

あと、MC。シロップは、普段のライブではMCが少ないんですよね。「ありがとう」だけで終わることもよくあるくらいですからね。しかも再始動後のライブはずっとワンマンのみで、こういった多数のバンドが出演するイベントに出るのは初めてだったので、「もしかしてMC無しかもな・・・」なんて思っていたんです。

ところが、この日の五十嵐隆は違ったんですよ。

「テレフォンズとは全然世代が違うんですけど、使っているスタジオが一緒だったりして、こうやって義理堅く呼んでくれてありがとうございます。また対バンしてもらえるように、僕もみなさんと一緒に復活を待ちたいと思います。」

って言ったんです。

で、そのあとに演奏されたのは「Reborn」でした。syrup16gが「Reborn」をやるのは、いつも誰かのためなんじゃないかと思うんですね。そもそもが元ベースの佐藤さんのことを歌った曲だし、武道館では客電が全て点いたあの光景をファンに見せるためだったし、生還でも待っていたファンやスタッフのためだったんじゃないかと思うんです。そんで、今回の「Reborn」は、たぶんテレフォンズとテレフォンズのファンに向けてですよね。テレフォンズとテレフォンズのファンが「昨日より今日が素晴らしい日」だって明日からも思えるように。それから、「おれたちが『Reborn』で生還したように、テレフォンズもきっと復活してね」っていうメッセージに聞こえました。

埼玉の先輩らしい、なんて熱いメッセージ。同世代のバンドにはできない、色々色々あったsyrup16gだからこそ言える、説得力があるメッセージだなって思いました。

私はですね、こういうイベントでsyrup16gはしれっと淡々とライブをやるのではないかとなんとなく想像してしまっていたんですよ。ところが蓋を開けてみたら、全然違いました。選曲も演出もMCも演奏もテンションも、テレフォンズへの愛に溢れた暖かいものでした。

この日、ほかのバンドはライブ中にどこかで「DISCO」と叫んでいました。そんななか、syrup16gは一度も「DISCO」と言いませんでした。でもsyrup16gは「リアル」をやることで、syrup16gなりのDISCOを叫んでいた気がします。「リアル」をやっているのを見ているとき、「妄想リアル」もある意味「I am DISCO」だよと思ったんですよ。あの〜、「I am DISCO」って文法めちゃくちゃじゃないですか。「私」が「DISCO」ってないじゃないですか。でもテレフォンズは、音楽でそれを無理矢理「あり」にしちゃったんですよね。そんで、この世界で「もっと SO リアル」にするのも本当は無理な話じゃないですか。でもシロップも自分の全てを音楽に捧げることでそれを現実にしようとしたのがこの曲なんですよね。

天才だけど不器用すぎる人間代表・五十嵐隆は、フェスが大嫌いでした。「犬が吠える」のときには、フェスでやれるような曲が作れたらいいなと思い、一度フェスを含む音楽シーンに適応しようと試みるのですが、結果的にはバンド自体を解散させました。かたや、やはり不器用な石毛輝は、フェス文化の中心にいました。フェスと共に大きくなり、フェスにかかせないバンドであったと思います。そんな絶頂の最中に、テレフォンズは活動休止を決めました。きっと不器用な人間にはいろいろ考えるところがあったのでしょうね。くわしくは知らんけど。

シロップは年に一度ワンマンツアーをするという独自の活動方法で戻ってきてくれました。テレフォンズもいつか戻ってきてほしいです。祭りの中心にいなくてもいい。自分なりの方法で活動してくれたらいいなと願っています。