虹色バス

昨年12月8日に横浜アリーナで行われた宇多田ヒカルのライブをustreamで見てから、「虹色バス」という曲をよく聴くようになりました。この曲の最後の方の<誰もいない世界へ 私を連れていって>の前の間奏あたりからは、空への階段を登っていくような、虹の方へ向かっていくような感覚があります。これは結構ヤバい曲だなと察知しました。

そしてこの感じは、andymoriの「16」にそっくりだなと思いました。すべてを悟りきったようなリズムといい、まあよくありそうな普通のことを普通の言葉で歌っているのに漂い続ける虚無感といい。虹色バスの<誰もいない世界へ 私を連れていって>も、16の<16のリズムで空をいく 明日もずっと空をいくのさ>も、どちらも全然「希望」なんかではない。空を見てるだけならいいけど、「空にいく」「空をいく」のは結構まずいことなんじゃないかと思うのです。でも宇多田ヒカルandymoriも、それをあの穏やかなメロディーで、いつものあの素晴らしい声で歌うのです。そして現に私はこの2曲をそれはもう何十回も聴いてしまうのです。

虹色バスの最後の最後は「Everybody feel the same」と繰り返されます。これもいくつもの解釈ができると思います。例えば「みんな、誰もいない世界に連れていって、って思ってるんだよね」とか、「みんなが同じことを感じる世界にはうんざりだから、誰もいない世界に行きたい」とか。

宇多田ヒカルがあんなに売れているのに、ライブをustreamしたりするのは、単に販売促進の為ではなく、今興味のない人に少しでもいいから聴いてほしい、その人たちに何か感じてほしいと思っているからじゃないかと思う。その「聴いた人が何かを感じる」為に、この人はものすごく精巧な何重ものトラップを用意しているんだなと思ったし、そのトラップに落ちた後の穴は相当深くてヤバい。音楽というのは、本当に色々なことができるんだなあと思いました。