日曜日

People In The Boxの「Ghost Apple」というアルバムは、「月曜日/無菌室」「火曜日/空室」「水曜日/密室」「木曜日/寝室」「金曜日/集中治療室」「土曜日/待合室」「日曜日/浴室」という7曲が入っています。私はPeople In The Boxのアルバムの中では、このアルバムは聴いている回数は少ないと思います。それは、「Aは花を散らして/Bは踊る/CとDはどうやって夢を見る?」という唖然とする歌詞が散りばめられる「金曜日/集中治療室」をはじめ、濃度80%の砂糖水のような、湯当たりしてしまうような、目眩を起こしてしまうほどの脚本と映像が、浮かび上がってきてしまうからです。そしてその全てをラストで受け止めるのが「日曜日/浴室」という曲です。

この曲はいくらでも深読みができます。全て「 」で括られた会話の体をとった歌詞になっていますが、果たしてこれは何人の会話なのでしょうか。そして誰と誰の会話なのでしょうか。僕と君なのか、僕と僕なのか、AとBとCとDなのか。

このアルバムが発売されたのは2009年の10月で、その頃この「日曜日/浴室」を聴いた私は、「だから私のいのちを君にあげる パンケーキみたいに切り分けて、あげる」というところがとてもとてもとても好きでした。それは他者と関わる覚悟に聞こえました。それも大袈裟なものではなく、自然と、何の躊躇も疑いもなく、朝食でパンケーキを切り分けるみたいな、あっさりしたすがすがしい覚悟に聞こえました。

濃度の濃いドロドロしたものや湯当たりするほどの場面をくぐり抜けて、こんな朝の光が降り注ぐギンガムチェックのテーブルクロスの上のパンケーキを、それはもう鮮やかに歌う波多野さんは、やはりただ者ではないというか、この歌の持っている強さをほんのひとかけら切り分けてもらえたら、このいかんともしがたい現実を、また月曜日から続いていく日々を積み重ねていけそうな気もするのです。