2024年6月30日

6月に聴いていた音楽です。

□「Scream from New York, NY」Been Stellar
□「Notes from a Quiet Life」Washed Out
□「Walk Thru Me」The Folk Implosion
□「Ray/Melt Valley」Hue's


syrup16g 再始動から10年だって。
当時、渋谷駅の地下に貼られたポスターの写真がカメラロールにあった。



あと最近ポータブルCDプレーヤーを買った。


再考 ART-SCHOOL『Requiem for Innocence』- サブクス解禁に寄せて -

今から22年前、「透明な音」というものが存在することを初めて知った。
ART-SCHOOL のファーストアルバム『Requiem for Innocence』を聴いたときだった。

透明な音、そのクリーンの爆音は、まさに「イノセンス」だった。
ポータブルCDプレーヤーの再生ボタンを押してその眩い透明な音が溢れ出すと、虐げられてきたイノセンスが次々と解放されていった。

< ねぇ 今から 美しい物を見ないか? >
そう言って始まるこのアルバムは、すぐに < 僕らはただ 失っていく > し、美しい物は < シャボン玉が舗道に落ち 砕けた瞬間 > の <刹那> にしか存在しないのだと知らされる。
そう、『Requiem for Innocence』には 「刹那」しかない。
ずっと急いでいて、バンドは叩きつけるように演奏し、木下理樹は性急に叫び、その「瞬間」はすぐに過ぎ去ってしまう。< 夏に咲く あの花は腐った> し、< 君が吐いた白い息 > は次の瞬間には跡形もなく消えてしまう。

出会って、その場しのぎで傷を舐め合う。
だが、決して本質的につながることはできない。
< 硝子の向こう 手を伸ばした だけど触れもしなかった >
< 手を伸ばして 触ろうとして 音も立てず崩れた >
いつだって手を伸ばして触ろうとすると、その瞬間に失ってしまう。
「刹那」にしか存在せず、「刹那」にしか感じることができない。

それは、まるで音楽そのものみたいだ、と思う。
特にライブがそうだ。数千円払って、一夜にして消えていく。
演奏するそばから、音はやがて消えていく。音はそのわずかな空間と時間、刹那にしか存在しない。物理的なものは後には何も残らない。

だけど、その刹那の輝きが、一瞬の温もりが、何もない人生の中でどれだけの灯火になってくれただろう。『Requiem for Innocence』を聴いていると、その「刹那」が音楽を愛してしまった者にとってどれだけ美しいものかということを再認識させられる。
このアルバムの中の「僕」は、<あどけなく笑って> とイノセンスを君に求めながら、自らは汚れていく。だが、その汚れさえ音が洗い流していけば、いつの間にか美しさに変わっていくのだ。その「刹那」は、少なくとも私にとっては、いつだって信じられるものだった。

あの頃、狂ったように聴いて、狂ったように焦がれていたアルバムラストの『乾いた花』は、今聴くとその「刹那」が極まりきってはじけていた。
< 繋がれていたいよ > < 生き残っていたいよ > という願いにすら < 今日は > という期限が付されていて、僕たちに明日はなかった。でも、だからこそ、この曲はやっぱりどこまでも美しかった。あんなに叩きつけて、あんなに叫んでおきながら、最後はそっと音を置いていくみたいに終わるところまで、すべてが美しかった。

ゴミ溜めの中のゴミは、今日も刹那でしかない音楽に助けられて生き延びる。その透明な音に手を伸ばすとき、絶対に触れることなんかできないのに、美しさで満たされる。そして、生きていけるわけではないが、一瞬だけ <生きて行ける 気がして >、解き放されたイノセンスを給水塔の縁の上に置いた。

Hue's 「ONEWAY TICKET TOUR FINAL」

Hue's ワンマンライブ「ONEWAY TICKET TOUR FINAL」
2024年6月7日(金) @ 新代田FEVER

setlist
1. Heine
2. Akira boy
3. Trash
4. umi e umi e
5. 長い夢が覚めて
6. You Say Hello
7. ドラマ
8. 雨
9. my girl
10. Missing
11. melt valley
12. Hallelujah
13. Flowers
14. Poolside
15. Snow
16. Birthday
17. Ray
18. ひまわり
19. Shangri-la
20. ベランダ
21. 夏を待っている
22. スタンドバイミー
23. (世界の終わり、からの) Youth
24. Mayday
25. Luka

En.
26. She was Lonely
27. SWAN
28. I LOVE YOU
29. Luka(dr.もりかず)
30. ALMA
31. Hate
32. Luka



19:30、客席の照明が落ち、暗闇にソニックユースの『Incinerate』が鳴り、メンバーがステージに上がる。
『Heine』で幕を開けたライブは、MCなしでひたすら曲が紡がれてゆく。
エンジンをかけてドライブが始まり、ここから Hue's と共に旅が始まっていく。そこに静かに巻き込まれていくことに興奮していた。
『umi e umi e』の古から吹いてきた風のようなメロディーに、『長い夢が覚めて』の遠い日の窓際で聞いていたようなギターリフに、不思議な感覚に陥っていく。すると、どこから射してきたのか正体不明の光が『You Say Hello』で不意にやってきた。このバンドは、音が輝いている。特にギターの音が。『ドラマ』の頃にはすっかり自分がどれだけこのバンドのことが好きでたまらないかを思い知らされていた。
『Missing』が終わったところで、「もう10曲くらいやったけど、あと2時間ぐらい続くんで」。
ほんとかよ、と思ったが、同時に楽しみでたまらない。

そして『melt valley』で、よりドープな世界への旅が始まる。
フジロックの奥地で夜に鳴っているみたいな音楽だ。原始的で、少しサイケデリックで、酩酊と混沌がある。

で、ここから20曲以上あったはずなのに、体感は一瞬だった。なんてこった。そんなことってある?
『Poolside』の眩しさに、『Birthday』の刹那に、胸をしめつけられたかと思えば、『Shangri-la』が圧倒的な光でそれを押し流し、『ベランダ』でついにHue's ここに極まれり、といった感覚になった。もう音楽は彼らのものだった。音楽に捧げた者しか、これは得られない。

こうなったらもう無敵状態。
「夏を待っている」、ただそれだけのことがここまで意味を持つ。
あのアウトロの凄まじさ。これだからロックバンドが好きだ。
おそらく色々なたくさんの思いを込めたミッシェルの『世界の終わり』でぶち上げてからの、それに引けを取らない『Youth』の輝き。『Incinerate』の引用から、道が開けて彼らがオリジナルをもぎ取っていく。そこで掻き鳴らしたギターと唸る5Wアンプと涙さえも掻き消すノイズで。もうだめだ。好きでたまらない。そしてその後は私が一番好きな『Mayday』だ。もうどうにでもしてくれ。このバンドに出会えて本当によかった。高速で『Luka』を鳴らして本編終了。

アンコールはもう正直あまり覚えていない。
高揚し切っていたのが『Hate』でさらに天井が抜けるみたいにもう一段駆け上がったのだけはなんとなく覚えている。

ギターはいつの間にかジャズマスターから SG へ、そしてまたいつの間にかブラストカルトへと持ち替えられていて、やっぱり私はブラストカルトの鳴りにどうにかなりそうなほど惹きつけられていた。

2時間半、あっという間だった。温泉に入っていたみたいだった。
Hue's のライブは、音が尖っていない。柔らかい、というのとも多分少し違って、突き刺さってくるのではなく、いつの間にかじわじわと包まれ、体の芯が温まってくる感じ。そう、温泉だ。そんなライブをするロックバンドって、あんまりいないと思う。

この32曲に及ぶワンマンライブを体験できたことは、私にとって本当に幸せなことで、かけがえのないものを受け取ることができた。
本当に、Hue's のみなさんありがとう。
また、東京でたくさんライブしてください。
あと、いつかフジロックに出てください。

2024年5月31日

5月に聴いていた音楽です。

□「HIT ME HARD AND SOFT」Billie Eilish
□「I Saw The TV Glow」Alex G
□「Raining On Your Pillow」DIIV
□「NOBODY」tofubeats
□「Life Is a D.A.N.C.E.」the telephones
□「偶然生まれた」OGRE YOU ASSHOLE