PITB acoustic 2020 

8月1日に開催された People In The Box によるアコースティックライブ「PITB acoustic 2020」を配信で見ました。
さすがはピープル、音も映像もすごいクオリティーでした。波多野さんこういうのめっちゃこだわりそうだもんな。チケット買ってよかった、見れてよかった、って心から思いました。

ライブは「まなざし」で始まり、最新アルバム「Tabula Rasa」に収録されている8曲は全部演奏されました。
波多野さんがMCで「モードとしては僕らまだ Tabula Rasa の中にいて、Tabula Rasa自体もものすごいアクチュアルというかまさに現実に対応しすぎているくらい対応しすぎているアルバムで。なので、まだ Tabula Rasa モードは続いている。」と言っていたけど、このライブを見て私も改めて Tabula Rasa がアクチュアルであるということを実感しました。
特に「ミネルヴァ」という曲はそもそもがシステムや構造の問題を描いている曲だけど、アコースティックのセットで演奏されることで、そのハリボテをペリペリと無邪気に剥がしていくような感じがあって、とてもよかったです。
他の曲も、アコースティックであることで、溢れる情報から距離を置くような姿勢や佇まいを提示されているような感じがありました。
全体的にドラムの音がとても柔らかくて、ライブを見ているうちに穏やかな気持ちになっていきました。

「Tabula Rasa」以外からの選曲も興味深いものがありました。
「町A」や「塔(エンパイアステートメント)」は今聴くと、今の2020年の町や新宿やニューヨークの風景を思わずにはいられないし、そこには当然ながら以前とは違う今の解釈が生まれてきます。この辺りは歌詞をあげて説明しているとものすごく長くなりそうなので、知らない人はぜひ歌詞をじっくり読みながら聴いてみてほしいです。
そして私は以前波多野さんが「どんな状況下でも演奏することができるような歌詞を書くことを心がけている」というようなことを言っていたのを思い出しました。今、確かにピープルの以前の曲は、この状況下で演奏することや聴くことになんの支障もない、それどころか今の現実にも対応しすぎるくらい対応している、と思いましたね。

この日のライブで演奏された曲の中で、一番古い曲は「レントゲン」でした。2008年にリリースされたこの曲は、今聴いても本当に底の知れない曲だなあと思います。少しおそろしくなる曲でもあります。いろんなことを考えてしまいます。

最後の方で波多野さんが「僕ら現実を受け止めながら粛々と音楽を演奏してまいりますのでよろしくお願いします」と言ったのを聞いて、やっぱりこの人はすごいなあと思いました。波多野さんて絶対諦めないし妥協しないんだよな。

最後の曲は「かみさま」でした。


People In The Box「かみさま」Music Video


ピープルが3.11以後に作ってきた曲には、穏やかな不穏だったり、自分が押しつぶされそうになるほど壮大な何かだったりを感じることがありましたが、アコースティックで演奏されると、それが本当は身近なもので、手触りの質感があるものなんだということに気づかされたりしました。
自分で自分の世界を守ることの大切さみたいなことを感じたりもしました。

まあ、あれこれ言ってるけど、とにかく久しぶりに聴いたピープルの演奏はすごかったです。
あと、他のバンドも、アコースティックセットのライブを見てみたいなと思いました。